生体防御機構の障害による消化器癌術後重症感染症の発生機序と対策に関する研究

1989 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01480329
• 研究機関: 大分医科大学
• 研究代表者: 斉藤 貴生 大分医科大学, 医学部, 助教授 (20037443)
• 研究分担者: 下田 勝広 大分医科大学, 医学部, 助手 (90211292) ; 桑原 亮彦 大分医科大学, 医学部, 助手 (10161811) ; 宮原 正樹 大分医科大学, 医学部, 助手 (10183641)
• キーワード: 好中球殺菌能 / Superoxide anion / Myeloperoxidase / Intra cellular killing / 重症感染症 / 食道癌 / 液性免疫

研究概要

1.消化器癌患者の好中球機能異常と術後感染との関連について
方法:食道癌14例、胃癌41例、健常者25例を対象とした。好中球機能としては、末梢血より採取し分離した好中球のSuperoxide anion産生能(SOA)Myeloperoxidase活性(MPO)、Intra cellular killing活性(KI)を測定した。手術患者については、入院時、術後1日、3日、7日、14日、21日、28日に測定を行った。
結果:(1)KIは、食道癌73.1±10.6%、胃癌73.5±8.7%であり、食道癌、胃癌患者のKIは、健常者の83.0±4.4%に比し、有意に低下していた。また、これらの患者では、SOPの上昇、MPOの低下が認められた。(2)術後重症感染の発生頻度は、食道癌4/14(28,6%)、胃癌2/41(4.9%)であった。(3)食道癌、胃癌患者について、重症感染発症例と非発症例の好中球機能を比較すると、KIは、食道癌、胃癌患者では感染発症例の方が非発症例に比し低値であった。すなわち、KIの低下は術後重症感染の発症と関連があった。SOP、MPOについては、このような関連はみられなかった。(4)KI値は、手術により一過性に低下し、直ちに回復した。胆石症では3日目が最低で、7日目に復したが、食道癌では7日目が最低で14日目に復し、低下がより強く、回復が遅延した。食道癌重症感染発症例では、回復が28日目と大巾に遅れた。(5)KI値の低下には低栄養が関与していた。
2.消化器癌患者の単球機能異常と術後感染との関連について
消化器癌患者末梢血の単球を分離し、Chemiluminescence法により、活性酸素産生能および貧食能について測定を行っている。
3.消化器癌患者の液性免疫能異常と術後感染との関連について
特異的、非特異的抗体産生能について検討を行っている。

研究成果

• [文献書誌] Saito T,Zeze K,Kuwahara A,Miyahara M,Kobayashi M: "Correlations between preoperative mulnutrition and septic complications after esophageal cancer surgery" Nutrition.
• [文献書誌] Saito T,Kuwahara A,Shigemitsu Y,Kinoshita T,Hirao E,Shimoda K,Miyahara M,Kobayashi M: "Factors related to mulnutrition in patients with esophageal cancer" Nutrition.
• [文献書誌] Saito T,Kuwahara A,Miyahara M,Shimoda K,Shigemitsu Y,Kinoshita T,Kobayashi M: "Immunologic status and complications of infection after surgery in esophageal cancer" J.Clin.Oncol.
• [文献書誌] Saito T,Kuwahara A,Shimoda K,Shigemitsu Y,Kinoshita T,Nakamura A,Miyahara M,Kobayashi M: "Factors related to impaired immunologic status in patients with esophageal cancer" J.Clin.Oncol.