生体防御機構の障害による消化器癌術後重症感染症の発生機序と対策に関する研究

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01480329
• 研究機関: 大分医科大学
• 研究代表者: 斉藤 貴生 大分医科大学, 医学部, 助教授 (20037443)
• 研究分担者: 下田 勝広 大分医科大学, 医学部, 助手 (90211292) ; 桑原 亮彦 大分医科大学, 医学部, 講師 (10161811) ; 宮原 正樹 大分医科大学, 医学部, 助手 (10183641)
• キーワード: 好中球殺菌能 / 抗体産生能 / 単球貧食能 / 単球サイトカイン産生能 / 術後重症感染症 / 消化器癌 / MRSA / 活性酸素産生能

研究概要

1.消化器癌患者の好中球機能と術後感染との関連について
食道癌33例、胃癌53例および胆石症29例について、活性酸素産生能、ミエロペルオキシダ-ゼ活性および細胞内殺菌能を測定した。その結果、術後の重症感染発症例は非発症例に比し、術前の活性酸素が有意に上昇しており、術前における好中球の活性化が術後感染症の発症と関連のあることが示された。
2.消化器癌患者の液性免疫と術後感染との関連について
食道癌22例、高齢健常者8例について、肺炎球菌ワクチンで免疫し、特異抗体産生能をELISA法で測定した。その結果、術後感染症発症例は、非発症例に比し抗PPSーIgG値が有意に低値であり、術前の抗体産生能の低下が術後感染症の発症に関与していることが示された。また、Methycillinーresistant Staphylococcus aureus(MRSA)感染症に限定してみても、同様の結果がえられた。
3.消化器癌患者の単球機能との関連について
食道癌12例、胃癌8例、胆石症6例について、単球の貧食能をZymosanによる浮遊法で、活性酸素産生能をケミルミネッセンス法で、サイトカイン(TNFーα,ILー1B,ILー6)産生能をELISA法で測定した。その結果、術後感染発症例は、非発症例に比して、術前の活性酸素産生能が有意に上昇し、TNF産生能が有意に低下していることが示された。
以上、術後重症感染発症例では、術前において、単球および好中球活性酸素産生能の上昇、単球TNFーα産生能の低下、特異抗体産生能の低下がみられ、液性免疫の低下ならびに潜在性感染に基因すると思われる単球、および好中球の機能異常が感染発症に関与していると考えられた。

研究成果

• [文献書誌] Saito T,Zeze K,Kuwahara A,Miyahara M,Kobayashi M: "Correlation between preoperative malnutrition and septic complications of esophageal surgery" Nutrition. 6. 303-308 (1990)
• [文献書誌] Saito T,Shigemitsu Y,Kinoshita T,Shimoda K,Kuwahara A,Miyahara M,Kobayashi M,Shimaoka A: "Factors related to malnutrition in patients with esophageal cancer" Nutrition. 7. 117-121 (1991)
• [文献書誌] Saito T,Kuwahara A,Shimoda K,Kinoshita T,Shigemitsu Y,Miyahara M,Kobayashi M: "Enhanced immunoglobulin levels correlate with infectious complications after surgery in esphageal cancer" J.Surg.Oncol.46(1). 3-8 (1991)
• [文献書誌] Saito T,Shimoda K,Shigemitsu Y,Kinoshiat T,Kuwahara A,Miyahara M,Kobayashi M: "Complications of infection and immunologic status after surgery for patients with esophageal cancer" J.Surg.Oncol.48. 21-27 (1991)
• [文献書誌] Saito T,Kuwahara A,Shimoda K,Kinoshita T,Sato K,Miyahara M,Kobayashi M: "Acute Phase Proteins and Infectious Complications after Surgery for Esophageal Cancer" Jpn.J.Surg.21. 627-636 (1991)
• [文献書誌] Shigemitsu Y,Saito T,Kinoshita T,Kobayashi M: "Influence of surgical stress on bactericidal activity of neutrophils and complications of infection in patients with esophageal cancer" J.Surg.Oncol.