研究概要 |
より確実に、容易に理想的な吻合状態が得られる消化管吻合法を確立する目的で本研究を行った。この吻合管を用いる吻合法は、従来の内腔を保護する方法より、さらに発展し、消化管の各層が連続して吻合されるような、新しい吻合法を確立した。 (1)各種吻合方法(手縫い,器械吻合)などとの比較検討を行ったところ早期の創傷治癒過程で,この吻合管による層々吻合法は、組織学的な検索でも、局所の血流(特に粘膜下での)の検索でも良好な結果であった。特に微小循環状態は,器械吻合に比較して,早期の減少が少なく,吻合に良い影響があり,術後の瘢痕による狭窄も少なかった。 (2)吻合管の形状はほぼ満足すべき結果であったが、易変形性、溶解性と吻合直後(7日前後)は管腔を保ち、その後速やかに溶解し、排出するのが理想的であるが,未だこの点では問題が残り,回収する方法か組成を改良する必要が臨床的には残った。 (3)吻合管の改良は,スポンジ層を外層に覆うことで,内層の管壁を薄くし,上述の(2)の問題点の解決を討って目下検討中である。 (4)悪条件下(poor risk)での吻合を各種吻合法と比較すると,器械吻合とほぼ同等の結果が得られたがさらに検討をすすめている。 (5)長期経過例での比較では、狭窄も最も少なく、管腔の狭少は層々吻合のため、瘢痕も最も少ない事が良い結果を生んだと考える。 溶解性吻合管を用いる吻合方法は,創傷治癒の上からも、確実な、理想的な吻合が行える方法であり、今後,臨床応用を目ざしたい。
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