研究概要 |
ラット膜腔動脈をミニクリップを用いて60分クランプした後に解除し,再潅流状態を作り,30分後にラット胃を内視鏡的および肉眼的観察をした。その結果,60分クランス時は軽度の胃粘膜病変の発症をみたにすぎなかったが,解除後30分では重篤な病変の発症をみた。この時の酸分泌動態をみると低酸であり、粘膜血流も低下を示した。組織内CoQ_<10>アニオンラジカルは虚血時低値であり,再潅流時に有意に増加した。この成績よりCoQ_<10>アニオンラジカルは組織虚血の指標となりうることが想定された。 また再潅流時の急性胃粘膜病変は研究者らが作成した小動物用内視鏡,特殊架台を使用することにより屠殺せずに経時的に観察が可能であり,このような病変の変化の検討に有用性が示された。 さらに再潅流時に発生するフリ-ラジカルの消去についてSOD,Cateーlose,Vit Eなどの消去剤を用いて急性胃粘膜病変発症防止効果について検討した。 再潅流前にSOD,Catalaseの投与を行っておくと胃粘膜病変の発症は完全に予防し得なかったが,病変は軽度であり,消去剤の効果が認められた。さらにVit Eも同様に行ったが,胃組織内Vit Eの高値とともに胃病変の発症を予防し得た。 30%熱傷ストレスモデルにおいては粘膜血流の減少と共にCoQ_<10>アニオンラジカルは減少し,次第に増加する傾向を示した。 これと同時に測定した消去系SODの変化は組織形質内に存在する安定性のCuZnSODおよび胃壁細胞分泌管内に存在する不安定なMnSODは共にストレス極早期に増加したが,次第に低値となった。この成績よりCoQ_<10>アニオンラジカルおよびSODは虚血に対して組織のhomeostosisを維持しようと反応することが想定された。
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