研究概要 |
ラット腹腔動脈をミニクリップで1時間クランプ(虚血)し、解除(再潅流)後、経時的に病理組織像、酸・ペプシン分泌動態,粘膜血流量,組織CoQ_<10>アニオンラジカル値(ESRにて測定)を施行した。また解除後30分前にSQD(super oxide dismutase)とCatalaseの消去剤を投与し、その効果を観察した。その結果、消去剤の投与により病変の重症度は軽度であり、胃粘膜病変の発症にフリ-ラジカルの関与が示唆された。 病理組織像をみると、解除後30分では重篤な出血性病変を認め、3日目より上皮化が認められるようになり、7日目で完全に治癒を示した。 酸・ペプシン分泌動態は再潅流時が有意に最底値(P<0.05)を示し、その後次第に改善を示し、7日目で両者とも前値に復した。 粘膜血流は虚血時が最底値(P<0.05)を示し、再潅流時は増加したが、前値までは回復せず、2日目で前値まで改善した。 CoQ_<10>アニオンラジカル値は虚血時で有意に低値となり、組織虚血の指標となりうることが想定された。 以上の成績からみると急性胃粘膜病変の発生機序は虚血、再潅流によるフリ-ラジカルの関与が多大であり、SQD,Catalase,vitEなどの消去剤の投与が病変の増悪化を抑制することも、本発生機序を支持するものと考えられた。 急性胃粘膜病変発症の予防に人工血液を用いる考えは今までに報告はなく、ミニクリップのクランプに代わり、脱血ショックモデル(体重の2%,1ml/10sec)を作成した。脱血量の1/2量を自家血,生食,人工血液で経動脈的に還流したところ、病変の程度に差は認められなかった。そこで胃粘膜局所に投与(経口投与)を行ったところ、人工血液で発症が軽度であった。これはChemiluminescenceの測定で有意に人工血液胃内投与群が低値であり、消去剤としての作用が認められた。
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