研究概要 |
70才以下の胃癌全摘例で術中治癒切除と判断した症例を対象に,再建術式を従来のRouxーY法(RY),空腸Pouch作成RouxーY法(PR),Pouch作成Interposition法(PI)の3群に分けrandomized controlled studyを行なっている。現在までに20例が対象となりRY法7例,PR法8例,PI法5例である。このうちRY法の1例は腹膜再発(12M)を認め,PR法の1例は術後1カ月以内にえん下性肺炎のため死亡,もう1例は術後1年目に腹膜再発にて死亡した。PI法では1例が縫合不生から膜膿瘍,肝不全を併発して死亡,もう1例は骨転移にて術後15カ月に死亡した。再発徴候の認められない6カ月以上経過例は14例でRY法6例,PR法6例,PI法2例である。術後のquality of lifeの指標として経口摂取量(術前健康時摂取量との比較),体重の変動(健康時体重との比較),術後愁訴および免疫能をRY法とPR法の2群で比較検討した。1回摂取量のうち80%以上摂取可能となった症例は術後6カ月でRY法6例中1例に対し,PR法6例中6例であり,12カ月でも同様であった。またRY法の症例で50%以下しか摂取できなかったものは術後6カ月で6例中2例,12カ月で6例中1例に認められた。術後体重については6カ月でRY法86.3%,PR法84.3%,12カ月で83.1%85.4%と両群間に差を認めなかった。術後愁訴はRY法の2例に軽い逆流性食道炎を認めたが,PR法では全くみられなかった。免疫学的な検討では現在までのところ特に差を認めていない。次に空腸Pouchが代用胃としての貯留能があるかどうかについて ^<99m>TcーDTPA添加流動食200mlを用いてPouch内のRI停滞率をPR法3例,について検討した。 いずれも急速に小腸に移行しており果して貯留能があるかどうか疑わしい結果であった。以上少数例での検討結果であるが,PR法は従来のRY法に比べて1回摂取量の増加が期待できるものと考えている。しかし体重に関しては更に術後長期の経過観察が必要である。
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