研究概要 |
1)高感度近赤外分光測定装置の試作:組織血液中の酸化および還元ヘモグロビン量、チトクロ-ム酸化酵素の酸化還元変化の無侵襲計測を目的に近赤外レ-ザ-分光装置を試作した。光源に最大出力400mwまで可変の4個(780,790,805,830,nm)の半導体レ-ザ-素子を用い4波長レ-ザ-光を組織に照射し反射又は透過光をシリコン受光素子で検出する方式を採用した。この4波長の組織吸光変化をマイクロコンピュ-タ-で処理し独自に決定した測定演算式により組織ヘモグロビン、チトクロ-ム酸化酵素の測定を行うものである。 2)臨床応用:生体への安全性を考慮し、最大出力30mwの低出力で組織(脳、筋肉)酸化および還元Hb量の測定を試みた。この場合は780,805,830nmの近赤外3波長を用い独自のHb演算式によりほぼ満足するべき結果を得た。臨床使用は主に体外循環を用いた心臓大血管手術時の脳酸素モニタ-に応用しその有用性を確認した。本測定法の臨床応用には今だ幾つかの問題点が残されているが各症例間での測定値の標準化に成功し測定成績の比較検討が可能となった。以上から本計測法の実用化に大きく近づいたと結論される。 3)基礎的研究としては出血性ショックラットを対象に脳組織傷害の程度とその可逆性をチトクロ-ム・オキシダ-ゼの挙動を中心に検討し興味ある事実を発見した。さらにPGI_2アナログの組織保護効果を近赤外分光法を用いて実証した。 4)以上の成果は第43回日本胸部外科学会、第31回日本脈管学会その他に口頭発表し関心を集めた。 5)今後の課題としてより高出カレ-ザ-の安全性の確立とチトクロ-ム酸化酵素の測定法の臨床導入が挙げられる。
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