研究課題
本研究を行う場合、最も重要な点は実際の臨床例でみられるような免疫抑制療法下で徐々に進行する急性拒絶反応モデルを得ることであり、平成元年度は同モデルを作成して、臨床における心臓移植後から退院までに相当する約1ケ月以内の急性拒絶反応について検討した。実験用動物は血液交差試験陰性で血中ミクロフィラリアのいない雑種犬(ドナ-、レシピエント各1頭、脱血犬1頭)を用いて、1989年4月〜1990年3月の間に計11回のイヌ同内性心臓移植を行った。手術方法は実際の臨床と同様に、ドナ-、レシピエントの麻酔及び手術は同時に行い、レシピエントの体外循環開始に合わせて、ドナ-の心停止・心摘出を行った。レシピエント心を取り出した後に、心筋保護下でドナ-心をレシピエントの心嚢内に同所性移植した。心拍再開し、循環動態が安定した後、体外循環を離脱する。ドナ-心の右房に双極烈電極を2つ(刺激用、記録用各1個)を装着し、導線は後頚部に出しておき、更に心筋生検用のマ-カ-をドナ-心の左室心尖部寄りに縫着した。免疫制御は手術前日よりレシピエントにサイクロスポリンA10mg/kg/dayを経口投与し、手術直後はメチルプレドニゾロン10mg/kgを8時間毎に3回静脈内投与し、術後2日目以降はサイクロスポリンA10mg/kg/dayの経口投与を行った。電気生理検査は、術後隔日に心臓スティミュレ-タを用いて、Basic cycle length 400msecの心房早期刺激法にて房室伝導系の有効不応期を測定した。病理組織検査は術中に縫着したマ-カ-をもとに、心エコ-下で前胸壁から針生検により心筋組織を採取し、光顕と電顕を用いて急性拒絶反応が起り、10日目以降には中等度以上となり、この間の電気生理学的診断の可能性が示された。このモデルの経過は諸外国の臨床例の経過と同様であることが明らかとなった。
すべて その他
すべて 文献書誌 (5件)