研究課題
[課題1]交又体外循環を用いた同所性心移植犬の作成と拒絶反応の早期診断:非フィラリア処理雑種犬を用い、交又体外循環下に同所性心移植6例を施行した。ドナ-とレシピエントには体重6〜7kgの小犬を用い、交又体外循環のSupport犬には、16〜24kgの成犬を用いた。同所性心臓移植手技のうち右心房については大静脈洞の後方切開を行い、sinus node lateral positioningにより吻合した。免疫抑制剤はサイクロスポリン6mg/kg/日、ステロイド(プレドニソロン)0.2mg/kg/日を術後投与した。術後7日目、14日目、21日目の心筋生検所見では、病理学的に有意な拒絶反応を認めず、早期刺激法による有効不応期の延長も認めなかった。一方、免疫抑制剤投与を中止した群については、房室伝導の有効不応期は128±45mseから263±42msecに延長し、病理組織学的にも急性拒絶反応の所見が得られ、電気生理学的検討の有用性が示唆された。[課題2]心肺移植における肺再潅流障害の病態に関する研究:本研究では、肺保存後に再潅流障害の肺胞系変化について検討した。常温にて肺を3時間虚血状態におき、再潅流障害を誘導したところ、肺胞内蛋白質量、サ-ファクタント量ともに著明な増加を認め、これに伴い、肺コンプライアンスの低下を認める事が判明した。すなわち、再潅流障害により、肺胞血管単位のバリヤ-である肺胞上皮細胞の障害が主たる原因であると考えられた。[課題3]UCLA溶液を用いた多臓器摘出法(muIti organ harvesting)の検討:心肺移植を確立するためには、心肺保存法の改良が不可欠である。本研究では、我々の開発したUCLA溶液を用い、急速フラシュ法にて、保存を試みた。今回の実験モデルでは平均虚血時間の心臓4.3時間、肺7.5時間、肝臓6時間の保存がそれぞれ可能となり、術後良好な臓器機能の再現が認められ、UCLA溶液の有用性が示唆された。
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