研究概要 |
本年度は,雑種成犬にくも膜下出血(SAH)を作製し,脳血管撮影にて脳血管攣縮の発生を確認するとともに,経時的に血漿中のエンドセリンー1(ETー1)を測定しその推移を検討した。また,ETー1に特異的な受容体拮抗剤(BQー485)にて脳血管攣縮の発生が抑制されるか否かについても検討した。BQー485は,400mg/mlの溶液をosmotic pumpに入れてこのosmotic pumpを皮下に埋め込んだ。 結果:(1)血漿中のETー1濃度は,SAH作製前には10ー25pg/mlであったがSAH後Day5に15ー60pg/mlと上昇していた。SAH作製後Day7に行った脳血管撮影では,約40%の攣縮が確認された。 (2)摘出血管標本にて,BQー485がETー1による収縮を濃度依存性に抑制することを確認した。次に,BQー485で処置したSAH犬で,BQー485の血漿中濃度を測定すると,Day0からDay7まで0.4ー0.8μMの濃度が維持されており,有効濃度に達していることが確認された。Day7に行った脳血管撮影では,脳血管攣縮がSAHコントロ-ル犬に比較して約15%軽減されていた。 これらの結果から,ETー1は脳血管攣縮の主因とは言えないものの,脳血管攣縮発生の一部には関与していることが示唆された。
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