研究概要 |
<平成元年度>(1)ETー1は,イヌ,家兎,サルの脳底動脈輪状標本において10^<ー12>〜3×10^<ー8>Mの範囲で容量依存性の収縮を惹起することを確認した。最大収縮は,40mMKC1による収縮よりも強いものであった。(2)SAH後の脳動脈では、低濃度のETー1に対する感受性が亢進することが確認された。(3)6〜1.2×10^<ー12>mol/kgのETー1を髄液中に注入すると,約24時間持続する脳血管攣縮が発生することが確認されたが,ETー1注入後10〜15分をピ-クに血圧の上昇,徐脈,一過性または持続性の呼吸抑制が観察された。このことから,持続性の呼吸抑制をきたさないで脳血管攣縮を発生させるETー1の濃度範囲はかなり狭いと考えられた。 <平成2年度>(4)ネコの髄腔内にETー1(10^<ー11>mol,10^<ー9>mol,vehicle)を注入し中大脳動脈領域の局所脳血流量(rCBF)を測定すると,ETー1注入後測定しえた180分後までrCBFが持続的に低下することが判明した。同時に行った脳血管撮影で内頚動脈や中大脳動脈には軽度の攣縮しか発生していないことが確認されたので,この顕著なrCBFに低下は,脳表の微小血管の収縮によるものと推察された。(5)SAH患者の血漿中のETー1濃度を測定したところ,脳血管攣縮の発生した患者では,脳血管攣縮の発生しなかった患者よりも軽度ETー1が上昇していることが確認された。 <平成3年度>(6)ETー1に特異的な受容体拮抗剤(BQー485)溶液をosmoticpumpに入れて皮下に埋め込み,脳血管攣縮の発生が抑制されるか否かについて検討したところ,Day7に行った脳血管撮影で脳血管攣縮がSAHコントロ-ル犬に比較して約15%軽減された。 これらの結果を総合すると,ETー1は脳血管攣縮の主因とは言えないものの,脳血管攣縮発生の一部には関与しているものと考えられた。
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