研究概要 |
最初に、ヒト脳腫瘍における発癌遺伝子産物の発現を検索した所、EGFR,C-myc,ki-ras等の各遺伝子産物が、ヒト悪性神経膠腫の40〜60%に発現されていた。In situ hybridizationでも、これら発癌遺伝子の増幅が同程度、認められ、患者の予後、及び組織像と対比しながら、発癌遺伝子の意義に関しての検討を進める予定である。特に、発癌遺伝子の増幅と組織適合遺伝子産物の発現との間に相関関係を認める傾向も得られ、腫瘍増殖に伴う両者の関連性にも検討を加える予定である。一方、脳腫瘍に対する免疫応答が弱い原因の一つとして、この組織適合遺伝子産物の発現が乏しい点も考えられる事より、直接、脳腫瘍細胞に、これらの遺伝子を注入して異物化を図った所、腫瘍リンパ球混合反応は増大し、刺激リンパ球の抗腫瘍活性も、2〜3倍強まる事実も判明した。更に、IL-2等のリンホカインも併用して、この活性リンパ球をより有効な腫瘍排除の方向に進め得るか否かも検討中である。更に、IL-2添加培養によるkiller細胞の誘導に際しては、Leu4単クロ-ン抗体でtriggringを図った後、三次元回転培養を行うと、より強力なkiller細胞が、より多量に得られる事実も判明し、今後、臨床面での応用も予定している。最後に、担脳腫瘍マウスを用いた実験より、担脳腫瘍の状態では、液性免疫の二次応答が減弱しており、免疫グロブリンのクラススウェッチが特異的に障害されている事実も観察され、その原因の一つとして、脳における抗原呈示能の障害が示唆された。今後、マウス間のリンパ球移入システムを用いて、脳腫瘍状態における免疫担当細胞間の異常に関しても検討を進め、脳腫瘍に対する免疫療法の可能性に関しての研究を予定している。
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