研究概要 |
強力で持続性の血管収縮作用をもつエンドセリンは、くも膜下出血後の脳血管攣縮の原因物質として注目されている。犬の髄腔内にエンドセリンを投与し、脳血管の組織学的変化を観察し、くも膜下出血による脳血管攣縮の血管と比較検討する。方法:雑種成犬を3群に分けた。1群(コントロ-ル群)は頸部にミニ浸透圧ポンプを留置し、髄腔内に生食水のみを1週間持続注入した。2群(エンドセリン群)には頸部のミニ浸透圧ポンプよりエンドセリン1(1.7nmol/7days)を髄腔内に1週間持続投与した。3群(血液群)には大槽自家血注入による2回出血モデルで脳血管攣縮を作成した。血管撮影により脳底動脈をday0,day7で観察した。灌流固定を行い、脳血管を組織学的に検索した。抗エンドセリン1抗体を用いて免疫組織化学的にも脳血管を観察し、比較検討した。結果:day7の血管撮影で脳底動脈径は、エンドセリン群では34.6%、血液群43%に縮小した。コントロ-ル群では血管径は変化しなかった。電顕による組織学的検索では、コントロ-ル群では異常所見は認められ無かった。エンドセリン群、血液群では内弾性板は求心性に屈曲を示し、重層化し、断裂も認められた。血管内皮細胞、平滑筋細胞の変性が観察された。エンドセリン群ではくも膜下腔、血管外膜に細胞浸潤は認められなかった免疫組織化学的検索で2群の内皮細胞にエンドセリン1を認めた。1群、3群においては確認出来なかった。結語:エンドセリンはくも膜下出血後に発生する脳血管攣縮の病態に重要な役割を果たすことが示唆される。
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