研究概要 |
血管内皮細胞で産生され、強力で持続性の血管収縮作用をもつエンドセリンは、くも膜下出血後の脳血管攣縮の原因物質として注目されている。そこで犬の髄腔内にエンドセリンを投与し、脳血管撮影所見、脳血管の組織学的変化を観察した。エンドセリン1nmol,10nmolを髄腔内に投与し、脳血管撮影を経時的24時間まで観察したが、脳血管の収縮は投与24時間後も確認された。収縮の度合いは投与量に依存した。エンドセリン投与約5分後より全身血圧は著明に上昇し、約30分間持続しその後投与前の値に戻った。この脳血管の収縮は、ニカルジピンを前もって髄腔内に投与することで完全に抑制された。また、頸部に留置したミニ浸透圧ポンプより、エンドセリン(1.7nmol/7days)を髄腔内に1週間持続投与した群、生食水を持続投与したコントロ-ル群、自家血注入による2回出血モデルで脳血管攣縮を作成した群の3群とを比較検討した。day7の血管撮影での脳底動脈径は、エンドセリン群では34.6%、血液群43%とコントロ-ル群に比し著明に縮小した。電顕による組織学的検索では、エンドセリン群、血液群ともに脳底動脈は著明に収縮し、血管内皮細胞と平滑筋細胞の変性壊死が観察され類似の変化が観察された。免疫組織化学的検索で、エンドセリン群の内皮細胞にエンドセリンを確認できたが、コントロ-ル群と血液群の内皮細胞には、エンドセリンは確認出来なかった。エンドセリンはくも膜下出血後に発生する脳血管攣縮の病態に重要な役割を果たすことが示唆された。
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