研究概要 |
基礎実験としてFeーPt針(1.8mm x 20mm,Tc=68℃)につき加温中の温度分布を測定した。測定には、プラチネル熱電対とハイブリッドレコ-ダ-(MHー9100)を用いた。これにより電磁波の影響少なく、多個所、同時連続測定が可能となった。インプラント環境は、等価寒天ファントム内、血流組織として家兎筋肉内及び腫瘍として皮下移植腫瘍(VXー7)内で測定した。針を中心に同心円上で2.5mm間隔の点で測定した結果、ファントム内で、針自身は68℃とるが10mm離れた点で43℃,筋肉内では5mmの所で40℃と低く,腫瘍内では7.5mmで42℃とその中間値を示した。即ち1本の針の周囲で直径15mm,円柱状の42℃以上の加温域が得られた。従ってサイズの異なった数本の針を組み合わせることにより不規則な形状の腫瘍にも応用出来ることが判った(小林,松井,藤内)。 インプラントの耐食性に関して急性溶出試験として生食中(30℃,85℃)に於ける不動態電位をステンレス鋼(SUSー316)と比較測定した。その結果30℃ではFeーPt 1.25V,SUS 0.5VでありFeーPtの耐食性が良いことが示され、85℃でも同様の結果であった(松井,小林,雨宮)。次に臨床治験の前段階として各種脳腫瘍40例のXeーCTによる血流量の測定を行った。その結果、グリオ-マ及び転移性脳腫瘍では平均30cc,髄膜腫で50ccと、前2者で腫瘍内血流量は、正常脳に比べ低値を示し、温熱療法にとって好都合と考えられた(口脇,小林)。以上の結果より我々は最終目標であるIHSによる臨床応用を、再発性グリ-オ-マ5例,転移性脳腫瘍5例に試みた。治療は腫瘍内温度42℃以上で60分間、週2回行い、全例放射線外照射療法を併用した。10例中9例に計10回以上の長期間、繰り返し、全く副作用なく治療できた。治療判定は、CTで行われ9例中1例に著効(CR),2例に有効(PR)、2例が不変(ST),4例が進行(PG)でった。今後更に症例を増やし有用性を検討したい(小林、藤内)。
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