研究概要 |
インプラントヒ-ティングシステム(IHS)のインプラント材料として種々の金属を検討したが、FeーPt合金(Fe:73%,Pt:27%)でキュリ-温度68℃が得られ、また毒性試験で全く腐食されず、耐食性についても急性溶出試験で不動態電位をステンレス鋼(SUSー316)と比較した結果、FeーPtの耐食性がすぐれており、本法でのインプラント針に最適と判断した(小林、松井)。次いでこのインプラント針を用いた家兎VXー7移植脳腫瘍での実験で、温熱単独群でも対照群に比べ生存期間の延長がみられ、温熱化学(ACNU)療法併用群ではさらにそれ以上の延長もみられ、IHSの有効な抗腫瘍効果を認めた(小林、口脇、藤内)。さらに臨床用にこのインプラント針を直径1.8mm、長さ15,20,25mmに作製し、磁場発生装置が出力2.5kw,周波数250kHz、内径30cmの円形誘導コイルの中心で16.5ガウスの磁場が得られるIHSを開発した(小林、松井、雨宮)。臨床に温熱療法を施行する場合で問題とされている温熱耐性については、hsp70の細胞内局在の変化をHela細胞で検討したが、核および核小体への移行は41〜45℃の各温度で速やかに起きており、また41℃では移行したhsp70が加温中に再び細胞質へ戻ることが判明した(小林、藤内)。IHSの経時的な病理組織学的変化を検討するため、家兎VXー7移植舌癌において検討したが、IHSを30分、1回加温では壊死組織領域はインプラント針を中心とした同心円状にはならず、中枢側に狭く末梢側に広い楕円状を呈し境界部は不規則な形状を示した。従ってそれらを考慮してインプラント針を配列する必要があると考えられた(小林、松井、藤内)。以上の結果をもとに23例の脳腫癌と13例の口腔腫瘍にIHSの温熱療法を行い、CR12例、PR9例、ST7例、PD8例と極めて有効であった(小林、藤内)。以上のようにIHSによる組織内温熱療法は、脳腫瘍のみならず口腔腫瘍に対しても新たな治療法として大いに期待できるものである。
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