研究課題
一般研究(B)
悪性脳腫瘍に対して密封小線源治療法を適用し、従来の治療法に比較して良好な治療成績を得たとの報告がなされ注目を集めている。しかし、本治療法の至適条件については不明の点が多く、その解明を目的として、正常脳組織に対する密封小線源照射の影響について基礎研究を行った。1.密封小線源照射モデルの確立:実験動物にはSDラットを用い、線源は当初Ir-192seedリボンを脳内に直接刺入していたが、小線源の安全性を考慮し、ラット組織内照射用カテーテル(外径1.2mm、ポリエチレン製)を作成、seed(0.5-1mci)を2個並列に封入し、これを用いて組織内照射を行った。その方法は、作成したカテーテル(seed assembly)を定位的にラット脳内(右大脳半球前半部)に刺入、約10日間留置した後抜去する方法をとった。照射後6ヶ月までラットの生存を確認しており、この実験モデルを用いて以下の実験を行った。2.照射後の経時的組織変化:seed assemblyの中心から3mm離れた部位をreference pointとし、この部位の総線量が100,200Gyとなるよう照射した2群と、模擬線源を同様に留置した対照群の計3群に分け検討した。照射終了直後より凝固壊死巣を400Gy以上照射領域に認め、照射側特に白質にfibrinの漏出および反応性astrocyteの出現を伴う著明な浮腫を認めた。4週間後には、壊死巣内に小石灰化巣が出現し、髄鞘の染色性は照射側白質で著明に低下していた。12週間後までの検討ではこの壊死巣の拡大は認めず、200Gy以下の照射領域では壊死巣は認められなかった。3.照射後の血液脳関門の機能的変化:潅流固定前にHRP(100mg/kg)を静注し、照射野の血管透過性を観察した。血管透過性の亢進は、照射終了直後最も著明で、50Gy以上照射領域で認められた。電顕では、血管内皮細胞のpino-cytosisの亢進、astrocyteの障害が観察された。