研究概要 |
我々は平成2年度までの研究で、in vitroならびにin vivoにおけるラット下垂体腫瘍に対する光化学療法(PDT)の有効性を確認した。しかしながら、in vivoにおいて光感受性物質フェオフォ-バイドーa(Phーa)の血液中からの消退が遅延したこと、および体重当たりのPhーa溶液投与量の多さに関して、さらに解決する必要があった。この点に関して動脈内Phーa投与法が有効ではないかと考え、本年度は、エストロゲン誘発ラット下垂体腫瘍(頭蓋内)を用いて、フェオフォ-バイドーaーNa(PhーaーNa)を内頚動脈より動脈内投与(動注)し、経時的に組織内PhーaーNa集積性を検討した。すなわち、担下垂体腫瘍ラットにPhーaーNa2mg/Kgを動注(注入量平均0.5ml、注入時間平均30秒)し、動注後経時的(1,3,4,6時間。それぞれn=3,2,3,4)に、腫瘍、血液および脳組織内(両側大脳、小脳)PhーaーNa濃度を蛍光高速液体クロマトグラフィ-を用いて測定した。その結果、下垂体腫瘍内のPhーaーNa濃度は1時間で最も高く0.59±0.12μg/tissue g(mean±SE)であり、以後経時的に減少し6時間で0.23±0.11μg/tissue gとなった。すなわち下垂体腫瘍内のPhーaーNa濃度は、血中濃度(1時間:0.28±0.08,6時間:0.09±0.03μ g/ml)よりも常に2倍以上の高値を示した。また、両側大脳および小脳では各時間とも0.04μ g/tissue g以下であり、腫瘍内濃度に比べ有意に低値であった。今回の実験結果は未だpreliminary dataであるが、平成2年度までの研究で行った脂溶性Phーa20mg/Kg静脈内投与に比べると、充分な腫瘍内Phーa濃度が得られなかった。この原因として用いたPhーa自体の性質(脂溶性:水溶性)、投与量(今回は10分の1量投与)の相違などが関与しているものと推察された。しかし、動注法では常に血中よりも高い下垂体腫瘍内濃度が得られることが明かとなったことより、今後さらに研究を進めることにより効果的な光感受性物質投与法として応用できるものと考えられる。
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