研究概要 |
神経膠腫を分子細胞遺伝学的に解析し、その発症過程に出現する種々の遺伝子レベルの変化を知ることを目的に本研究を行った。多形性神経膠茅腫(GBM)8例、良性神経膠腫3例、髄茅腫2例、神経茅腫1例、髄膜腫5例、神経鞘腫1例の20例を対象とし、erbB,Nーmyc,cーmyc,cーsis遺伝子の増幅を検討した。GBMの8例中2例(25%)でそれぞれ25倍と62倍のerbBの増幅を認めた。また、Nーmyc,cーsisでは、GBMの1例(13%)で、それぞれ40倍と3〜4倍の同時増幅を認めた。さらに5例のGBMで、第3,7,8,9,10,13,22番染色体のRFLP probeを用いてloss of heterozygosity(LOH)を検索し,特定の染色体欠失の有無を検討した。5例中4例で第10番染色体の欠失があり、他1例で第8番と第22番染色体の同時欠失を認めた。次に、脳腫瘍15例(神経膠腫13例、奇形腫1例、神経線維腫1例)の染色体分析を行った。悪性神経膠腫6例が核型分析可能であった。第2,3,7,9,12,14番染色体に比較的高頻度に構造異常が検出されたが、これらの転座や欠失の切断点は特定の部位に集中せず、病型に特異的と考えられる変化はなかった。しかし、切断点は異なるものの6例中3例に第9番染色体をinvolveする異常があった。再発例、予後不良例の3例にdouble minute chromolsomes(dmin),1例にhomogeneosly staining region(HSR)を認めた。GBM以外では、未熟奇形腫で46,XY,ー11,+der(11)t(1;11)(q12;p15.5)が観察され、悪性神経線維腫では、ー13,+18の数的異常と、i(17q)の構造異常を認めた。またin situハイブリダイゼ-ション法を技術的に確立し、染色体解析に応用した。本手法により、未熟奇形腫に出現した。der(11)t(1;11)(q12;p15.5)が二動原体性異常であることを確認した。以上今回の研究より、第10番染色体に神経膠腫発症に関与するがん抑制遺伝子の存在が示唆された。さらに、進行例でerbBの増幅頻度が高いことが確認された。
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