1989 年度実績報告書

チロジン水酸化酵素遺伝子の培養細胞への導入:パ-キンソンモデルラットへの脳内移植

研究課題

研究課題/領域番号	01480362
研究機関	国立精神・神経センター
研究代表者	高坂新一国立精神・神経センター, 神経研究所・代謝研究部, 部長 (50112686)
研究分担者	中嶋一行国立精神神経センター, 神経研究所・代謝研究部, 研究員 (50175494) 武井延之国立精神神経センター, 神経研究所・代謝研究部, 研究員内田耕一国立精神神経センター, 神経研究所・代謝研究部, 流動研究員 (00176687)
キーワード	チロジン水酸化酵素 / 遺伝子導入 / 培養細胞 / ド-パミン / LーDOPA / 脳内移植 / パ-キンソン病
研究概要	黒質線条体ド-パミン作働性ニュ-ロンを破壊したパ-キンソンモデルラットで見られる異常回転運動が、ド-パミン産生ニュ-ロンの脳内移植により改善されるとする報告が蓄積されている。申請者らは、この脳内移植による機能回復の機序を解明することを目的として、チロジン水酸化酵素(TH)遺伝子を導入した培養非神経細胞を、脳内移植に用いることが可能かについて検討を加えている。本年度は、TH遺伝子(cDNA)をC6グリオ-マ細胞に導入し、カテコラミン合成能につき検討を加えた。THcDNAを発現ベクタ-pKCRH2に組み込み、ネオマイシン耐性遺伝子を有するプラスミドpSV2neoとともにC6細胞に導入した。THcDNAを導入した細胞はTH抗体による免疫染色で陽性であり、又、ウェスタンブロッティングでは分子量6万(TH分子に相当)の単一バンドが染色された。これらの結果はTHcDNAの導入によりC6細胞でTH蛋白が合成されていることを示すものである。本細胞をホモゲナイズし、TH活性を測定してみると、高い活性を有しており、又、HPLCーECDを用いた解析では、多量のLーDOPAが検出された。しかしながら本細胞は脱炭酸酵素活性がなく、従ってド-パミンも検出することはできなかった。次に、本細胞中に蓄積しているLーDOPAが細胞外へ放出され得るかを検討するため、培養中のLーDOPA濃度を測定してみると、時間とともに倍地中LーDOPA量が増加しており、LーDOPAが明らかに細胞外へも出うることが判明した。最後に本細胞が脳内という環境においてもTHを合成し得るかを免疫組織化学的に検討してみると、脳内に移植したC6細胞でもTH蛋白が合成されていることが示された。しかしこのC6細胞は腫瘍細胞であることから、脳内に大きな組織塊を形成し本研究の目的には適さなかった。次年度は正常線維芽細胞を用い、同様の実験を行う予定である。

研究成果
(7件)

すべてその他

すべて文献書誌 (7件)

[文献書誌] Kohsaka,S.: "Expression of Ia antigen on vascular endothelial cells in mouse cerebral tissue grafted into the third ventricle of rat brain" Brain Research. 484. 340-347 (1989)
[文献書誌] Asou,H.: "Changes in ganglioside composition and morphological features during the development of cultured astrocytes from rat brain" Neuroscience Research. 6. 369-375 (1989)
[文献書誌] Nakano,Y.: "Mosaic reconstruction of blood vessels in mouse neocortical tissue transplanted into the third ventricle of rat brain" Brain Research. 496. 336-340 (1989)
[文献書誌] Uchida,K.: "Synthesis of L-3,4-dihydroxyphenylalanine by tyrosine hydroxylase cDNA-transfected C6 cells:application for intracerebral grafting" Journal of Neurochemistry. 53. 728-732 (1989)
[文献書誌] 高坂新一: "神経組織移植研究の現状" Clinical Neuroscience. 7. 390-393 (1989)
[文献書誌] 高坂新一: "脳組織移植における免疫応答" 神経研究の進歩. 33. 986-995 (1989)
[文献書誌] 高坂新一: "神経組織の移植における免疫応答と血管新生" 平凡社, 263 (1989)

1989 年度 実績報告書

チロジン水酸化酵素遺伝子の培養細胞への導入:パ-キンソンモデルラットへの脳内移植

研究代表者

高坂 新一 国立精神・神経センター, 神経研究所・代謝研究部, 部長 (50112686)

研究成果

[文献書誌] Kohsaka,S.: "Expression of Ia antigen on vascular endothelial cells in mouse cerebral tissue grafted into the third ventricle of rat brain" Brain Research. 484. 340-347 (1989)

[文献書誌] Asou,H.: "Changes in ganglioside composition and morphological features during the development of cultured astrocytes from rat brain" Neuroscience Research. 6. 369-375 (1989)

[文献書誌] Nakano,Y.: "Mosaic reconstruction of blood vessels in mouse neocortical tissue transplanted into the third ventricle of rat brain" Brain Research. 496. 336-340 (1989)

[文献書誌] Uchida,K.: "Synthesis of L-3,4-dihydroxyphenylalanine by tyrosine hydroxylase cDNA-transfected C6 cells:application for intracerebral grafting" Journal of Neurochemistry. 53. 728-732 (1989)

[文献書誌] 高坂新一: "神経組織移植研究の現状" Clinical Neuroscience. 7. 390-393 (1989)

[文献書誌] 高坂新一: "脳組織移植における免疫応答" 神経研究の進歩. 33. 986-995 (1989)

[文献書誌] 高坂新一: "神経組織の移植における免疫応答と血管新生" 平凡社, 263 (1989)

1989 年度実績報告書

高坂新一国立精神・神経センター, 神経研究所・代謝研究部, 部長 (50112686)