本研究はMTT assayを骨軟部悪性腫瘍に対する抗癌剤感受性試験として応用し、その実用性を検討する目的で行った。まず、11種のヒト骨肉腫由来培養細胞株を用いて基礎的検討を行った。各細胞株において溶解されたホルマザン塩の吸光度と細胞数は良好な相関関係を示した。これらの細胞株に対して最大血中濃度においてはアクチノマイシンD、アドリアマイシン、シスプラチン、メソトレキセ-ト、ビンクリスチン、サイクロフォスファミドが高い有効率を示した。最大血中濃度の10分の1においては、これら薬剤も有効率は低かった。これらの薬剤は骨肉腫に有効とされており最大血中濃度における効果判定が適当であると考えられた。また骨肉腫に対する有効性が報告されていないエトポサイドがいずれの細胞株に対しても高い効果を示し、骨肉腫に対する有効性が示唆された。これらの細胞株に対する基礎的検討の結果をふまえて、臨床材料に対してMTT assayを用いた抗癌剤感受性試験を行った。2年間に手術または生検により得られた骨軟部悪性腫瘍67検体を用いた。67検体中64検体(96%)に感受性判定が可能であった。1×10^4個以上を播種した検体は全て判定可能であった。感受性判定が可能であった薬剤数は平均8.4剤であった。30検体について臨床効果との関連性を前向き研究および後向き研究によって検討し得た。MTT assayを用いた感受性試験の結果と臨床効果との相関は、真陽性が15検体、偽陽性が2検体、真陰性が10検体、偽陽性が3検体であり、真陽性率が88%、真陰性率が77%で、全体的な予測率は83%であった。本法は簡便、迅速で少ない材料で多数の薬剤の感受性を判定できる。また成功率も高く臨床効果との相関も高いことが示された。以上、本研究によりMTT assayを用いた感受性試験は骨軟部悪性腫瘍に対する実用的な抗癌剤感受性試験になりうるものと考えられた。
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