研究概要 |
RAの動物実験モデルとして知られているコラ-ゲン関節炎を用いてその発症と慢性化に関与する因子の研究を行った。コラ-ゲン関節炎の発症にはII型コラ-ゲンに対する液性免疫と細胞性免疫の関与が知られているが、その詳細に関しては明らかにされていない。 1.我々はまず、急性炎症に関与する因子を明らかにする目的で抗II型コラ-ゲン抗体の移入による関節炎をモデルに用いた。 抗II型コラ-ゲン抗体移入(Day 0)による関節炎に対して、免疫抑制剤として注目されているCyclosporin AとFK506を投与し、関節炎がどのように影響されるかについて検討した。CsA(200mg/kg,Day-1)投与は血清移入関節炎に対し抑制作用を示さなかったが、FK(10mg/kg,DAY-1)投与はこれを有意に抑制した。 2.また、免疫前にII型コラ-ゲンを投与することによって関節炎の発症が抑制されることが知られ、抗イディオタイプ抗体やサプレッサ-細胞の関与などが考えられている。この前投与の方法の違いによって関節炎がどの程度抑制されるかについて検討を行った。 II型コラ-ゲン(1mg/kg,Day-14)を静脈内、腹腔内、門脈内に投与すると、関節炎の発症は有意に抑制され免疫学的寛容が得られたが、経口投与では関節炎を有意に抑制することはできなかった。抗原の前投与による免疫学的寛容成立のメカニズムの一つとして我々はサプレッサ-細胞の関与を明らかにしてきており、II型コラ-ゲンは正常な生体成分の一つであることを考え合わせると、II型コラ-ゲンに対する免疫学的寛容の有無が関節炎発症に対するラットの個体差に関して重要な役割を果たしている可能性がある。
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