研究概要 |
1.慢性関節リウマチ(RA)の実験モデルであるコラ-ゲン関節炎(CIA)に対する免疫抑制剤FK506の関節炎抑制作用についての検討を行った.II型コラ-ゲン(cII)免疫時にFK506 10mg/kgを1回投与することにより,関節炎の発症が完全に抑制され,CIIに対する抗体価,DTH皮膚反応も抑制された.また,関節炎発症後に投与しても関節炎の強さ,抗CII抗体価が有意に抑制された.すなわち,FK506は関節炎発症に対する予防効果のみならず,治療効果をも有していることが判明した. 2.FK506のCIAにおける治療効果についてさらに検討するために,抗CII抗体の受身移入による関節炎に対する影響について,Cyclosporin A(CsA)との比較検討を行った.その結果,FK506はpassive arthritisを抑制したが,CsAはFK506の20倍量でも抑制しなかった. 3.抗体移入による関節炎の持続を修飾する細胞群の性質を知るために,抗原(CII)前投与により誘導される免疫学的寛容がこの関節炎におよぼす影響について検討した.CII前投与はCII免疫による関節炎の発症を抑制するだけでなく,抗体移入関節炎の発症も抑制した.この抑制はcyclophosphamide(CY)によって解除されたことから,CY感受性suppressor Tーcellの関与が考えられた.また,抗体移入関節炎の臨床経過には細胞性の因子が関与していることが明かとなった. 4.抗体移入関節炎における重要なeffector cellのひとつである好中球の役割について,顆粒球コロニ-形成刺激因子(GーCSF)を用いて検討した.その結果,関節炎の発症には好中球の存在が必要であり,好中球の増加は関節炎の増強を促すことが判明した.このことは好中球機能を阻害することによる関節炎治療の可能性を示唆するものであった.
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