研究概要 |
本研究は、麻酔薬の麻酔、鎮痛効果発現に関与するノルアドレナリン(NA)性神経系の役割のうち、とくにα_2受容体の役割を明らかにし、麻酔薬とα_2受容体作用薬の併用による効果発現に関する基礎的知見を得ることを目的とした。ラットをプラスチック製の箱に入れ、以下の実験を行った。ラットを覚醒群、笑気群(N20,75%)、ペントバルビタ-ル群(PB,80mg/kg,i.p.)に分け、各群をさらに無処置群、ストレス負荷群、及びclonidine前投与群(CLO,50ug/kg)に分けた。ストレス負荷は、金網拘束を2時間行った。経時的に平均動脈圧:mBP及び鎮痛効果(テ-ルフリック潜時:%MPE)を測定し、2時間後に断頭して局所脳、脊髄NA濃度(6カ所)をHPLC-ECDで測定した。N_2O群では、mBPが上昇し、その上昇はCLOで抑制されたが、ストレス負荷で増強されなかった。また、%MPE増加はCLOで軽度増強されるが、ストレス負荷で増強されなかった。NA濃度は、孤束核(SOL)を除く全ての測定部位で覚醒群に比べ低値であった。PB群では、mBPが低下し、その低下はCLOで増強され、ストレス負荷でもmBPは上昇しなかった。%MPEは、PB単独では変化せず、CLOとの併用で著しく増加した。また、ストレス負荷による%MPEの増加は初期に軽度に抑制され、その後徐々に増強する傾向がみられた。NA濃度は覚醒時と比べSOLで高値であった。覚醒群のストレス負荷でみられるNAの減少はPBで抑制された。以上より、N_2Oの血圧上昇作用や鎮痛作用、あるいはPBの血圧下降作用や鎮静作用にNA性神経が密接に関与していることが明らかとなり、とくに、α_2受容体刺激薬がこれらの変化を修飾することが分かった。今後、α_2受容体結合変化を関連させ、α_2受容体の麻酔、鎮痛作用に果たす役割を明らかにする。
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