研究概要 |
[目的]麻酔薬・鎮痛薬(N_2O:75%,Halothane:1.3%,Pentobarbital(PB):80mg/kg ip,Morphine:5mg/kg iv)の鎮痛作用における中枢ノルアドレナリン(NA)神経系、特にα_2受容体の役割を明らかにすることを目的とし、前年度と同様のモデルを用い、(1)麻酔薬のNA神経伝達機構に及ぼす影響、(2)麻酔薬の鎮痛効果に及ぼすα_2受容体アゴニスト,クロニジン(CLO)の効果、(3)N_2Oの鎮痛効果発現に対するα_2受容体の果す役割、について検討した。 [方法と結果](1)NA神経伝達機構:局所脳・脊髄(孤束核、青斑核:LC、視床下部、海馬:HC、大脳皮質:CT、脊髄後角:SP)のNAレベルをHPLCーECD法で測定した。覚醒群に比べ、N_2O群ではLCで54%低値、Halothane群ではCTで45%低値となり、またMorphine群ではHCで88%高値となった。また[ ^3H]ーclonidine特異的結合(in vitro autoradiography)は、覚醒群に比べN_2O群ではSPで16%、LCで13%高値となった。(2)麻酔薬の鎮痛効果に及ぼすCLOの効果:各麻酔薬投与時のtailーflick latencyを指標とした鎮痛効果を測定した。鎮痛効果(%MPE)は、覚醒時CLO投与で20ー40%増加し、さらにHalothane、PBにCLOを投与すると60ー80%増強された。(3)N_2Oの鎮痛効果発現:LC破壊を行うと前述したN_2Oの鎮痛効果は、一過性に%MPEが30%増加するのみで、著しく抑制された。拘束ストレス誘発鎮痛は、覚醒時%MPEが最大50%増加したが、N_2O群の%MPEの増加は拘束ストレスで影響を受けなかった。Morphineの鎮痛効果を抑制するに十分な量のnaloxone(5mg/kg iv)を投与してもN_2Oの鎮痛効果は拮抗されなかった。 [まとめ]麻酔薬の鎮痛作用に中枢ノルアドレナリンα_2受容体が重要な役割を果たしている可能性が明らかとなった。特にN_2Oの鎮痛効果発現にはμ型オピオイドよりも、LC由来の下行性抑制系のNAや一次知覚ニュ-ロンにおけるα_2受容体の関与が有力と考えられた。
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