研究概要 |
BDFマウスの皮下で増殖させたHarding-Passey B-16 メラノ-マ組織を剪刃をもって細分し、これにコラゲナ-ゼを作用させて単細胞化して,生理食塩水に浮遊させた。そして以下の抗腫瘍薬をそれぞれ10,15,20分間,所定濃度で作用させた。すなわちドキソルビシンでは0,100,1000,10000μg/ml,クロモマイシンでは、0,100,200,500μg/ml,アクラルビシンでは0,500,1000,2000μg/ml,カルボコンでは0,100,200,400μg/mlとした。そして抗腫瘍薬に曝露した細胞を10^6個ずつ,健康正常BDFマウス(4週)の皮下に移植し,3カ月間その生着の有無を観察した。 研究の第1段階として1抗腫瘍薬についての上記の曝露時間、およびその濃度の組合せ(12組)それぞれ9回,異なる実験日に行った。その結果,ドキソルビシンでは20分間,10mg/mlの曝露により、クロモマイシンでは15分間,500μg/mlの曝露により,アクラルビシンでは20分間,1000μg/ml曝露によって腫瘍細胞の正常動物への生着が認められなかった。一方、カルボコンではいかなる時間,濃度の曝露でも生着が認められた。 研究第2段階としてドキソルビシンでは,20分,10mg/ml,クロモマイシンでは15分,500μg/ml,および20分間,500μg/ml,アクラルビシンでは20分,1mg/mlおよび15分間2mg/ml,20分間2mg/mlの条件での曝露について50回の追加実験を行った。その結果いずれの追加実験でも腫瘍の移植は行われなかった。したがって、ドキソルビシンでは最低10mg/ml,20分,クロモマイシンでは500μg/ml,15分,アクラルビシンでは1mg/ml,20分のin vitroによってHarding-Passey B-16細胞を殺傷しうると判断し得た(0.01〈P〈0.05)。したがってこの結果は悪性腫瘍切除時の回収式自己血輸血に応用できると結論された。
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