研究課題
1)尿中における好中球と抗菌剤との協力作用尿路感染症の際に尿中に遊出する好中球が尿中で抗菌剤とどのような協力作用を有するかを尿中の抗菌剤存在下での好中球殺菌能を測定した。ニュ-キノロン剤を対象薬剤として、ヒト末梢血より分離した好中球を300mOsm/kgの低張尿中で薬剤存在下あるいは非存在下にて好中球を刺激し、その殺菌能をス-パ-オキサイド産生能を指標として測定した。その結果、尿中好中球殺菌能は10μg/mlの薬剤存在下では増強され、100μg/mlの薬剤存在下では逆に抑制された。以上より、尿中の薬剤濃度が高いときには薬剤が起炎菌の殺菌に直接あたるが、薬剤濃度が低下したときには、薬剤は尿中の好中球と協力して起炎菌の殺菌にあたることが示された。(結果は第37回日本化学療法学会東日本支部総会で発表)2)免疫不全マウスによる実験的尿路感染症の作製と白血球殺菌能の推移マウスの腹腔に200mg/kgのcyclophosphamideを投与し、その腹腔好中球とマクロファ-ジの数と殺菌能の経時的変動を測定した。腹腔好中球とマクロファ-ジの数はcyclophosphamide投与後4日目で最少となったが、殺菌能も同様に低下した。従って、抗癌化学療法後の免疫不全状態は白血球の数の減少のみならず殺菌能の低下にもよることが明らかとなった。また、免疫不全マウスの片側腎盂に大腸菌あるいは緑膿菌を直接注入し実験的腎盂腎炎を作製した場合、白血球の数の減少と殺菌能の低下に比例して50%lethal doseの減少を認めた。以上の結果より、免疫不全宿主の腎盂腎炎の予後を予測するには白血球の数と殺菌能の測定を行うことが必要と考えられ、現在さらに治療実験を促進中である。
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