研究概要 |
交配日の明確な妊娠後期(妊娠120〜130日)のヒツジ(サフォ-ク種)5頭を対象として、Chronic in Utero Catheterization(Fujimoto,S.et al.,l982,l983)ならびに母体への気管内挿管(気管切開後、気管内チュ-ブを挿着)を施行した。人為的に母体の低酸素状態を誘導し、子宮動脈、胎仔頸・大腿動脈および臍帯の血流量、血圧、酸素分圧、pH等の測定ならびに胎仔心電図による心拍数変動パタ-ンの連続記録を行い、胎仔仮死発生と胎仔臍帯循環血流量との関連性を把握することを目的として実験を行った。 術後3日目以降において、母体ならびに胎仔の呼吸、循環動態が安定状態になることを確認したのち、母体より経気道的に様々な割合で酸素・窒素混合ガスを導入した。その結果、母体の低酸素状態の影響により胎仔動脈血pH、pO_2の有為な低下が観察された。さらに、胎仔動脈血pHが7.25以下になるまで不可を加えると、胎仔に非可逆性の変化がもたらされ、母体へ酸素投与および経静脈的重曹投与によっても胎仔の改善は認められなかった。 Organic acid代謝改善剤の臨床的有用性を確認する目的で胎仔動脈血pHが7.25以下になった時にDichlor-acetateを投与したが、胎仔の改善は認められず、胎仔死亡に至ることが確認された。 本実験の途中、陣痛発来により失敗する例が認められたことにより、来年度以降、chronic preparationを妊娠日齢110日(ヒトの妊娠30週に相当)前後に行い、例数を増やしさらに詳細な検討を重ねたい。その際、従来の血流測定法に改良を加え、超音波血流計(日本光電T201)を子宮動脈、臍帯および胎仔頸動脈に装着し、それら血流量の関係も検討する予定である。
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