研究概要 |
本年度はヤギ胎仔の睡眠覚醒状態を明らかにすることを目的とし,睡眠覚醒物質として確立されているPGE2・D2の負荷実験を行い,その結果を検討した。子宮外胎仔保育法により人工羊水中で保育中のヤギ胎仔に、脳波・筋電図・眼電図等の電極を装着し,保育開始後48時間経過して児の状態が安定したことを確認した後,実験を開始した。コントロ-ルとして5時間自然の状態を観察記録した後にPGE2あるいはPGD2を5時間点滴静注した。負荷中の5時間,負荷終了直後の5時間,さらにその後の5時間を観察記録し,コントロ-ルを含めたこれらの4期間における胎児の状態を比較検討した。 負荷前の5時間と最後の5時間との間には差が認められず,実験中の胎仔は安定した状態であることが示された。覚醒物質であるPGE2投与中には高振幅(脳波)期の筋電活動が増加し,投与終了後は逆に減少した。低振幅期には明かな変化は認められなかった。睡眠物質のPGD2投与では高振幅期には特に変化が認められないのに対し,低振幅期において負荷終了後に著しい筋電活動の増加が認められた。 高振幅期に睡眠物質を負荷しても変化が認められないことは,高振幅期が睡眠期であることを意味するものと考えられる。また高振幅期には覚醒物質により筋電活動量の変化が認められ,高振幅期における筋電活動量は睡眠の深さを反映しているものであると推察される。 低振幅期に覚醒物質を投与しても変化が認められないことから,低振幅期と覚醒との関連が示唆される。また低振幅期で睡眠物質投与終了後に筋電活動の増加が認められるのは,低振幅期で筋電活動の豊富な時期が覚醒状態と密接に関連があることを示すものである。
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