研究概要 |
ハムスタ-卵管由来細胞培養系の培養上澄(条件づけ培地)を作製し、胚発生促進効果が体細胞と共存しない場合にも観察されるかどうかを検討した。条件づけ培地を作製するのに体細胞の培養上澄を24,48,120時間に回収し、対照群の基本培養液(BWW+0.3%BSA)における胚発生効率を比較した。胚発生の過程は前24時間に倒立型顕微鏡にて観察し、胚盤胞率を算定した。その結果、Day5に胚盤胞に達したものは24時間の条件づけ培地では1.1%(1/91)で、その際の対照群は3.1%(3/97)であった。条件づけ培地作製に時間をかけると培養効率は低下し、48時間の条件づけ培地では4ーCell率が23.6%(21/89)で、その際の対照群40.0%(28/70)に比して有意に低値であった。この傾向は条件づけ培地作製に120時間を費やした場合もっと顕著で、条件づけ培地における4ーCell率18.5%(15/81)であり、その際の対照群も9.9%(8/81)であり、48時間および120時間の条件づけ培地、および同じ時間培養器中で経過させた対照群においても胚盤胞率は0であった。 胚発生促進活性が、条件づけ培地を用いた場合には消失してしまう機序を明らかにするため新たに共培養を行った条件づけ培地を用いて胚を培養したところ、やはり胚盤胞率は0.6%(1/169)であり、また共培養した培養上澄に共培養にもちいて来た胚を隣のwellに移し培養を行った場合にも、胚盤胞率は0.6%(1/178)であった。これらの結果は共培養によって観察される胚発生促進効果が体細胞由来の極めて不安定な物質かあるいは共培養に際して胚が体細胞の極めて近くで培養される局所的環境条件を考えると、濃度依存性の極めて高い物質であると考えられる。 体細胞の近傍で体細胞が消費する為に相対的に酸素分圧が低下しているか或は体細胞が培養液中のFe,Cu或はZnなどの微量金属を取り込み一種のフィルタ-効果を発揮する為ではないかと考えられた。
|