妊娠110ー130日の羊を用いて、帝王切開術を施行し、一度羊胎仔を子宮外にとり出し、羊胎仔の頚動脈、頚静脈、気管支にカニュレ-ションを行い、また心電図をとるために電極を植え込み、臍帯にはカフをつけ胎仔を子宮内に戻した。子宮収縮というストレスを臍帯につけたカフをふくらませることによって、一時的に胎仔にいく血流を遮断し、胎仔を低酸素状態にしていった。初年度の結果は、臍帯圧迫を60秒、vesting timeを60秒にし、これを10回位くり返す頃に羊胎仔PHは7.20以下になる。胎仔心拍数図上、羊胎仔PHが7.20以上のときは心拍数は急激に下降するが、PHが悪化していくにしたがい、心拍数の下降はかえって緩徐になっていくことがわかった。また、PHが7.20以下になると心拍数の下降は同じ程度となり、その頃に胎仔血中カテコ-ルアミンは上昇し、一定の値をとることがわかった。副交感神経遮断薬であるアトロピンを胎仔に投与すると、臍帯を圧迫しても心拍数は下降しないが、胎仔がPH7.20以下になるとアトロピンを投与しておいても心拍数が下降することがわかり、心拍数下降については、胎仔がアチドーシスになっている場合と、なっていない場合とでは心拍数の下降が違うことが示唆された。また、臨床的に胎児仮死に陥っている場合、超音波ドプラ法で臍帯動脈血流波形をみると、拡張期血流波形は消失または逆転することが報告されている。平成3年度は、平成2年度の実験デ-タを追加すると共に、超音波ドプラ法にて、胎仔臍帯動脈波形を測定した。その結果、acuteな低酸素状態では、臨床上みられた、拡張期血流波形の消失または逆転はみられなかった。以上の結果から今後は、胎仔をある程度の低酸素状態にある一定期間において(慢性的低酸素状態)、さらに低酸素にした場合の胎仔心拍数変化、カテコ-ルアミン値等の内分泌の変化、動脈波形の変化の測定が必要であることが示唆された。
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