本年度内の研究目標であった、本全胚培養システム内での催奇形因子投与による条件設定は完了した。また、実験で得られた培養胎仔についての透過型電子顕微鏡による鶴察も可能となった。以下に説明する。 1)催奇形実験系の完成と実験の遂行 使用する催奇形因子である13ーCisーretinoic acidが脂性であるため、水性として培地に溶解せしめるために必要な溶媒としてのDMSOの催奇形性の有無を実験系で検討し、その非催奇形性を確認した。 ついで、13ーCisーRA濃度の10^<-4>[M]、10^<-5>[M]、コントロ-ル群の3群に分けて、36時間培養し、生存率が甚しく悪い結果を得た。続いて濃度10^<-3>[M]、2×10^<-4>[M]、10^<-4>[M]でそれぞれ24時間培養し、2×10^<-4>[M]では外見上著明な発達の遅れや奇形の発症もみていない。 以上より、妊娠12日目のWistar系ラット母獣からとり出した胎仔を37℃で24時間回転培養し、培養液にDMSOを加えたコントロ-ル群と、培養液中に13ーCisーRAを10^<-3>[M]〜10^<-5>[M]を加えた各群について、培養後の胎仔の外表所見と組織学的所見について、透過型電顕も加えて検討した。 2)実験結果 コントロ-ル群では、顔面の形成が進み、耳胞周囲の間葉系細胞凝集と、耳管咽頭嚢周囲に耳小骨原基と思われる間葉系細胞凝集がみられた。 RA添加培養胎仔では、第1.第2〓弓を中心とした外表上の分化は明らかではなかったが、耳管咽頭嚢周囲の間葉細胞凝集が進み、表皮下の間葉細胞中に核濃縮像が多い傾向がみられ、透過型電顕による観察で、これがライリゾ-ムの増加であることが解った。これから、催奇形因子に対して臨界期にある聴器領域の間葉細胞群が、RAに直接、間接に影響を受けて反応した結果であり、奇形発現機序の一端を示すと思われた。
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