正常および内リンパ水腫モルモット血管条のレクチン結合部位

1991 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 01480408
• 研究機関: 高知医科大学
• 研究代表者: 瀬口 春道 高知医科大学, 医学部, 教授 (90030866)
• 研究分担者: 小林 俊博 高知医科大学, 医学部, 助手 (40153621) ; 岡田 暉彦 高知医科大学, 医学部, 助教授 (00025628)
• キーワード: モルモット / 内リンパ水腫 / 血管条 / レクチン / NaーKーATPase

研究概要

内リンパ水腫は、メニエ-ル病の病理所見として特徴的である。この内リンパ水腫の発生機序を明らかにする目的で、内リンパの化学組成の維特に重要な働きを行っている血管条の辺縁細胞の形質膜の糖鎖の解析を、SBA、HPA、RCAーII、LFA、WGA等のレクチンを用い、金コロイドで標識し、Lowicryl K4Mに包埋した超薄切片上で行った。Nーacetylーgaーlactosamineとgalactoseと特異的に結合するSBA、HPA、RCAーIIの金粒子は、血管条辺縁細胞の腔側形質膜の微絨毛部及び飲小窩部にみられ、また辺縁細胞の核上部細胞質中の頂部小胞、エンドゾ-ムの限界膜にみられた。Nーacetylーneuraminic acidと結合するLFAは、辺縁細胞の基底部の基底陥凹形質にみとめられ、また血管条内の血管周囲の基底膜にもみられた。Nーacetylーglucosamineと結合するWGAは、血管条を構成するすべての種類の細胞の形質膜にみられた。これらは前年度と同様に、飲小窩、エンドゾ-ム、頂部小胞の各部の形質膜の性質が同じであることを示し、これらの間で形成膜の代謝回転のあることを示している。実験的に内リンパ嚢を破壊し、内リンパ水腫を惹起させた血管条においては、前年度と同様に、上記のレクチンの結合態度は、正常とは差異がなかった。またこの実験的内リンパ水腫動物の血管条のNaーKーATPase活性の局在の検索した所、内リンパ水腫発生後約1ヶ年では、血管条の辺縁細胞基底陥凹部の細胞間の浮腫、及びその部の萎縮、また中間細胞の萎縮及び変性、消失がみられた。これらの例でも、辺縁細胞の基底陥凹部の形質膜には、NaーKーATPase活性がみられ、内リンパ水腫が長期にわたり、血管条の辺縁細胞、中間細胞が完全に変性、消失してしまわない限り、内リンパの化学組成が正常例と比べ、変化しないのは、このためと推測される。

研究成果

• [文献書誌] Nishiyama,S.: "Carbohydrates in the guinea pig stria vascularis demonstrated vith lectinーgold techniques" Acta Otolaryngol.(Stockh.). 111. 1041-1050 (1991)
• [文献書誌] Seguchi,H.: "Biochemical and cytochemical study of trimetaphosphatase activity in mammalian tissues" Acta Histochem.Cytochem.25. 51-57 (1992)
• [文献書誌] Nishiyama,S.: "NaーKーATPase activity in the guineaーpig stria vascularis in experimentally induced endolymphatic hydrops" Hearing Res.(1992)
• [文献書誌] Seguchi,H.: "Ultracytochemical localization of Ca^<++>ーdependent adenosine triーphosphatase and ouabainーsensitive K^+ーdependent Pーnitrophenylーphoshatase activities in the organ of Corti of the guinea pig cochlea" Acta Otolaryngol.(Stockh.). (1992)
• [文献書誌] Kobayshi,T.: "Ultracytochemical study of the trimetaphosphatase activity in the spiral ligament of the guinea pig inner ear" Hearing Res.(1992)
• [文献書誌] 瀬口 春道: "組織学・組織化学的アプロ-チ(内耳)" 朝倉書店, (1992)