私たちは、今まで主としてヒヨコ網膜を材料として各種神経伝達物質の局在を光学顕微鏡ならびに電子顕微鏡を用いて証明してきた。その際用いた手法は神経伝達物質あるいはその合成酵素に対する抗体による免疫組織化学法によった。この手法により明かにされることは、その物質が網膜のどの細胞に存在するか、あるいはその物質的で生成されるかである。神経伝達物質の効果はレセプタ-の局在の検討は、網膜視覚伝達機構解明のため不可欠なものである。現在までレセプタ-の精製が困難であったため、その形態学的局在を正確に把握することは不可能であった。しかし、近年βアドレノレセプタ-の構造が決定され、それを抗原とした抗体の作成が可能となり、その形態学的応用1.実際に作用が発現する神経細胞あるいは受容器の局在を知る(光学顕微鏡ならびに電子顕微鏡的に)。2. 神経伝達物質を放出していると考えられるとその作用が発現するレセプタ-との関係を知る(二重染色法による)。などの道が開かれた。今回の研究目的はこの抗βアドレノレセプタ-抗体を用い、網膜におけるβアドレノレセプタ-の局在を明らかにすることにある。βアドレナリンレセプタ-抗体により、ラット網膜アマクリン細胞に豊富な陽性細胞を認めた。連続する2枚のsemithir sectionによりこの陽性細胞がチロシンハイドロキシレ-スをも同時に含有することを示した。この結果はド-パミン性アマクリン細胞がアドレナリン性アマクリン細胞よりのinputを受容することを示す。また、今回はビタミンD依存性カルシウム結合蛋白質ーカルビンディン様免疫反応を試みた所、ド-パミン細胞が同時にカルビンディンを含有することが明らかとなった。このことはド-パミン性アマクリン細胞にカルビンディンが後シナプス機能になんらかの役割を果たしていることが示唆された。
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