研究概要 |
口腔粘膜上皮は咀嚼上皮、裏装上皮、機能上皮に分類されkeratin subunitの染色性も異なる。keratin No8,13は裏装上皮で、No10,11,18は咀嚼上皮で陽性細胞数が多い。No19は咀嚼上皮では基底細胞に希に陽性を示すが、裏層上皮では全基底細胞に陽性である。白板症において,真性角化症例では顆粒層にfilagglin陽性をで、広域keratinは皮膚に類似した所見を示す。扁平上皮癌において、各種keratinやinvolucrin染色は癌細胞巣の周辺部で陰性、中心部で隔性所見を認め、分化程度が低いものほど細胞個々の染色程度が多様化する傾向がある。EGF receptorは正常粘膜、乳頭腫において、基底細胞〜下部棘細胞層の細胞膜に反応を認める。白板症では、反応は一般に低下するが、伸長した上皮釘脚部の傍基底細胞、棘細胞の細胞膜に陽性反応を示す。扁平上皮癌では散在性に細胞膜での反応を認める。さらに同症例で、Proriferating cell nucleor antigen(PCNA)を証明したところ、基底細胞層のPCNAの陽性率は上皮釘脚の伸長した白板症で高く、過角化症のみの白板症や乳頭腫、正常粘膜では低い。扁平上皮癌ではPCNA陽性細胞は基底層や傍基底層に相当する部分だけでなく、さらに上層にも認められた。またPCNA陽性細胞はEGFレセプタ-の反応を示さない。ハムスタ-頬嚢の発癌実験において、初期癌のkeratinの変化は、棘細胞層の肥厚のみの症例では下部棘細胞層でのKL1の染色性が低下、消失する。上皮釘脚が伸長した症例では、棘細胞層に相当する部位でのKL1染色性が一部で低下し、基底細胞層のPKK1の染色性が低下、消失する。上皮内で免疫系に作用するランゲルハンス細胞の発癌時における動態を検索するための基礎実験としてハムスタ-頬嚢における起炎剤およびステロイド剤の塗布実験を行い、起炎剤塗布によりランゲルハンス細胞数が正常の約2倍に、ステロイド剤投与により正常の約半数となることが判明した。
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