本年度は、舌の呼吸リズム活動と咀嚼リズム活動とのカプリングの中枢神経機構について、同一のpremotor neuronの軸索が2本に分岐して、横隔神経運動ニュ-ロンおよび舌下神経運動ニュ-ロンの両方に直接投射して興奮性シナプス結合しているか否かを、ケタミン麻酔下のネコを用いて形態学的・生理学的手法で解析し、以下の結果を得た。 1)横隔神経核に蛍光色素Nuclear yellow、舌下神経核に蛍光色素Fast blueを限局性に注入した結果、それぞれの色素で逆行性に標識されたニュ-ロンが孤束核の腹外側部、疑核の背内側部およびKF核周囲に見いだされ、これらのニュ-ロンの中には両色素により二重標識されたニュ-ロンが存在した。 2)頸髄の横隔神経運動ニュ-ロンプ-ルに刺入した金属微小電極による限局性刺激に対して逆行性スパイク応答を示す橋・延髄網様体の呼吸ニュ-ロンのなかには舌下神経核の刺激に対しても逆行性に興奮するものがあった。 3)呼吸ニュ-ロンの単一ニュ-ロン活動を導出し、その自発性スパイクをtriggerとして、舌下神経および横隔神経の発射活動を平均加算した結果、それぞれの神経発射活動に単シナプス性の潜時で増大を示すものとともに、同一の呼吸ニュ-ロンからこれら両神経活動に単シナプス性に増大を引き起こすものが見いだされた。 以上の事から、延髄網様体の呼吸ニュ-ロンの中には呼吸リズム活動を示す舌下神経運動ニュ-ロンに投射する興奮性premotor neuronが存在し、その一部は軸索を分岐して横隔神経運動ニュ-ロンにも投射していると、結論した。これらのニュ-ロンは舌の呼吸リズム活動と咀嚼リズム活動とのカプリングに関与していると想定される。
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