研究概要 |
NaClなどの塩で味細胞を刺激したときに発生する受容器電位は、どのような機構で生じるのかを究明した。実験にはウシガエル舌のin vivoとin vitro味細胞を使用した。電位および電流は、微小電極法またはパッチ電極法で導出した。味細胞の基底外側膜を覆う間質液のNa^+をコリン,TMAやTEAで置換すると、0.5M MaClと0.5M KClの塩刺激に対する脱分極性受容器電位の大きさは、約50%減少した。間質液にTTXを加えても塩応答は影響を受けなかった。これらの結果から、NaCl等の塩刺激に対する味覚変換には、基底外側膜のTTX非感受性Na^+チャネルが大きく関与することを示す。味受容膜の透過性が塩応答の発生にどのように関与しているかを検討するためには、基底外側膜のイオンの輸送をできる限り阻止しておかなければならない。そのために、受容膜を覆う表面液と間質液を10mM Na^+,2.5mM K^+を含む等張蔗糖液で置換した。そうして味細胞の受容膜を0.5M NaCl,0.2M NaCl,0.05M NaClで刺激すると、脱分極受容器電位の逆転電位の平均は、それぞれ、+28.8,6.4,-40.0mVになった。刺激液の濃度によって逆転電位の値が変化することは、NaCl溶液が刺激液及び細胞外液の両方の作用を有することを意味する。0.2M LiCl,NaCl,KClで刺激すると、逆転電位はすべて違い、味受容膜での透過性はLi^+>Na^+>K^+の順で大きい。0.2M NaClと0.2M NaSCNの刺激による応答の逆転電位は等しくなく陰イオンが受容膜を透過することを示唆した。0.5M NaClにアニオン阻害剤SITSを加えて刺激すると0.5M NaCl単独刺激の場合より逆転電位は大きくなり、受容膜での陰イオンの透過を示した。パッチ電極を用い、cell attachedパッチクランプ法で、味受容膜パッチから塩刺激依存の電流を記録することができた。結論として、塩の受容器電位は受容膜でのアニオン・カチオンの透過性と基底外側膜でのカチオンの透過性に起因する。
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