研究概要 |
平成元年度にエンドトキシン(LPS)の口腔内微小循環系に対する作用特性をほぼ明確にできた。本年度は,in vitroにおけるLPSの血管平滑筋に対する効果を検討した。これまでの研究経過は以下のように要約できる。 1.<LPSによるkinin受容体誘導(ウサギ舌動脈を用いた実験)>___ー LPSを全身的に処置すると,cycloheximideあるいはactinomycin Dによって阻害されるタンパク合成反応段階を介してB_1ーキニン受容体の形成が誘導される。そして,B_1ーキニン受容体アゴニストによる受容体刺激がLPS全身処置動物の摘出舌動脈標本を収縮させることを明らかにした。 2.<LPSと血管収縮性自律神経系との関連(ウサギ腸間膜動・静脈を用いた実験)>___ー LPSを全身的に処置すると,交感神経シナプス前膜α_2ー受容体と抑制性ムスカリン受容体が刺激され,これにともなって神経終末からのノルアドレナリン遊離が阻害される可能性が示唆された。 以上の実験結果から,口腔諸器官に隣接する舌動脈に対して,LPSはキニン類との相互作用で収縮性反応を増強し,一方,腹部領域血管に対しては,神経性収縮を抑制することが明確になった。このようなLPSの効果は,少なくとも全身性に処置された場合にみられるものであり,これに関して補体系を介する機構や,一部,活性酸素ラジカル生成を介する機構についての傍証を得つつあるため,その機構解明に向けて研究を進行させている。
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