研究概要 |
単離イヌ筋形質膜(sarcolemma;SL)と筋小胞体(sarcoplasmic reticulum;SR)を試料とし,それぞれNa^+,K^+ーATPase活性とCa^<2+>ーATPase活性を指標にLPSの影響を検討した。また,特異的ハイドロキシルラジカル( ^・OH)発生系であるジヒドロキシフマル酸(dihydroxyーfumarate;DHF)/Fe^<3+>ーADP系を用い比較実験とした。LPSと活性酸素ラジカル発生系の効果を明確にしたのち,電子スピン共鳴(ESR)法によるLPSおよびDHF/Fe^<3+>ーADPで生ずる活性酸素ラジカルの測定とSLおよびSRのス-パ-オキサイド消去能の定量を行なった。さらに脂質過酸化最終産物であるmalondialdehyde(MDA)の測定をthioarubiturate(TBA)法により行ない脂質過酸化との関連性も検討した。LPSは,SLのNa^+,K^+ーATPase活性とSRのCa^<2+>ーATPase活性をsuperoxide dismutase(SOD)抑制性に低下させた。DHF/Fe^<3+>ーADPはSLのNa^+,K^+ーATPase活性とSRのCa^<2+>ーATPase活性をSOD抑制性に低下させ,さらにこれらの低下は鉄キレ-タ-であるdeferoxamine(DFX)の存在下で濃度依存性に抑制された。LPS,DHF/Fe^<3+>ーADP系は ^・OH特有のESRシグナルを発現させたがLPSによって得られるシグナルの相対強度はDFXでほとんど影響を受けず,DHF/Fe^<3+>ーADPによって得られたシグナルの相対強度はDFXで強く減弱した。SL,およびSRは,その蛋白量依存性にLPSで生ずるESRシグナル相対強度を減弱させた。SL,およびSRはほとんどス-パ-オキサイド消去能を示さなかった。LPSはSLとSRのMAD量を濃度依存性に増加させた。以上の結果からLPSは ^・OH発生を介してSLおよびSRの酵素活性を低下させていることが示唆された。これはLPSによりSLおよびSRで脂質過酸化が生じたことと,SLあるいはSR自身ESRシグナル相対強度を減弱させたことから膜成分が活性酸素ラジカルを捕捉しそのため障害を受けるとする可能性に矛盾はない。
|