含金属モノマ-を有するボンディング剤、レジンセメントを歯質に良好に接着させる目的で、有機質溶解能を持つ化合物を用いて、歯質、特に、象牙質被着面を無機質化する試みた。その結果は、脱灰力の弱い酸と次亜塩素酸ナトリウムとその類似化合物の併用が接着性の向上には有効であり、エナメル質に関しては燐酸エッチングと同等の接着強さを発現させ、象牙質に関しては被着体破壊を起こすほどの接着強さを発現させた。しかし、次亜塩素酸塩は歯周組織等に対して障害作用があることが指摘されている、さらに、酸と接触すると分解するため、その処理操作が煩類であるのが大きな欠点であった。本年度はこれらの欠点を改善するために、有機質溶解能を持ち、組織障害作用が少なく且つ酸との混合が可能な化合物として界面活性剤に着目して、象牙質処理表面の無機質化と処理操作の簡素化を試みた。 その結果は、燐酸、クエン酸と陽イオン界面活性剤であるセチルピリジニュ-ムクロライドとの共存水溶液により象牙質に対しては約10MPa、エナメル質に関しては被着体破壊を起こす程の接着強さ(約40MPa)を発現させ、接着強さに関してはEDTA、フェノ-ルスルホン酸等の脱灰力の弱い酸と次亜塩素酸塩類の処理に較べ同等以上であったが、処理面に与えるダメ-ジに関しては象牙細管は完全に開口しておりダメ-ジに関しては次亜塩素酸塩類に劣った。 処理操作に関しては、酸処理→水洗→次亜塩素酸塩処理→水洗と云う4段階を酸ー界面活性剤水溶液処理→水洗の2段階に簡素化することが出来た。
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