有機、無機、金属と多岐にわたる歯科修復材料同志及び歯質との接着性向上を計る手段として、従来から存在するカルボキシル基、燐酸エステル基などの官能基に着目した機能性モノマ-とは違い、金属をその分子内に持つ含金属モノマ-に着目した。その各種歯科修復材料および歯質の研磨面に対する接着性を検討した結果は無機系材料に対しては現在市販されている製品以上の接着性を示し、それらに含まれている現在の代表的な接着性モノマ-である4ーMETA、フェニルーP以上の可能性を示した。しかしながら、象牙質のように有機質を含む材料に対しては小さな接着性しか示さず、問題を残した。象牙質に対する接着性を向上させる試みは現在の保存修復領域では極めて重要な今日的課題であり含金属モノマ-を接着性モノマ-として用いる為には解決しなければならない。 解決の手段として、含金属モノマ-にとって好ましい被着面を造り出す為に、酸と有機質溶解剤を併用する新しい歯面処理法を考案した。酸としては従来の歯面処理に用いられている酸のほとんどが有効であり、歯面に与えるダメ-ジが少ないと云う観点からEDTA、フェノ-ルスルホン酸などの脱灰力の弱い酸が選ばれた。有機質溶解剤としては次亜塩素酸ナトリウムに代表される次亜塩素酸塩類が効果的であり、エナメル質、象牙質の両者に良好に接着させることが出来た。 次亜塩素酸塩類を用いる歯面処理は、その処理操作が煩雑であることが大きな欠点であった。そこで、有機質溶解剤として次亜塩素酸塩類の代わりに界面活性剤を選び、酸との共存水溶液による処理を行うことにより、より少ない操作で類似の歯面状態を造り出すことに成功した。
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