昨年度は自律反応と咬筋筋活動量の分析システムを開発し、顎機能異常者に対するバイオフィ-ドバック療法の評価に適したパラメ-タについて検討した。この方法を用いて顎機能異常者数名に対し評価をおこなったところ、バイオフィ-ドバック訓練を重ねるに従い(1)安静時の咀嚼筋筋活動量が減少する、(2)脳波のα帯域が増加しβ帯域が減少する、(3)指尖脈派は基線の動揺が小さくなる傾向を認めたが、パラメ-タの変化と臨床所見が必ずしも一致しなかった。このことから、安静時のみの評価法に加え、バイオフィ-ドバック療法が咀嚼筋の機能時に及ぼす影響を探る必要があると考え、本年度は咀嚼筋の機能時における評価を行う分析システムを作成した。これは咀嚼筋の咬みしめ時と咀嚼時の筋電図を解析するシステムで、コンピュ-タを用いて独自に開発した。このシステムを用いて顎機能に異常のない成人(男性10名、女性10名)と、バイオフィ-ドバック療法を施行していない顎機能異常者(男性12名、女性20名)に対して、咬みしめとガム咀嚼時における筋電図を解析、比較した。その結果、顎機能異常者は正常者と比較して(1)最大咬みしめの咀嚼筋筋活動が小さい、(2)パワ-スペクトル分析における平均パワ-周波数値が疲労により低域にシフトしずらい、(3)パワ-スペクトルの低域増加率が低い傾向にある、(4)筋放電リズムのばらつき(変異係数)が大きいことが分かり、治療前後の評価を行うに適していることが確認できた。 今後、バイオフィ-ドバック施行前後の顎機能異常者に対し、咀嚼筋と全身的なリラクセイションを調べるとともに、咀嚼筋の機能時における評価を加え、最終的な治療効果を確認する予定である。
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