平成元年度に開発した自律反応と筋活動の分析システムおよび平成二年度作成した咀囁筋機能時の分析・評価システムを応用し、顎機能異常者に対する前頭筋EMGバイフィ-ドバック療法(BFT)の治療効果を評価してきた。しかし、従来の方法では訓練時間が短くフィ-ドバック情報が認識できないという患者からの内省報告があり、筋の弛暖訓練効果が得られない症例もみられた。そこで今年度は、リラクセイションをより効果的に行うための訓練時間の再検討を行った。また、フィ-ドバック信号信体が訓練効果に影響することも懸念されるため、この点についても同時に検討した。さらに、BFT前後における実験的ストレス負荷時の筋活動および自律反応の変化を検討し、BFTのストレス応答反応に及ぼす影響を評価した。被験者は健常者16名(男女各ネ名)とし、Cyborg社製Jー33を用いた聴覚バイオフィ-ドバックを行った。訓練効果を評価するため前頭筋、側頭筋、咬筋および胸鎖乳突筋の筋電図および自律反応として心電図、指尖脈波、呼吸曲線を記録し、これらパラメ-タの経時的変化を分析・評価した。その結果、(1)前頭筋のリラクセイションを効果的に行うためには、7分前後の訓練時間が必要であると思われた。(2)バイオフィ-ドバックを重ねることによる前頭筋のリラクセイションの学習効果があること、前頭筋のみならずその周囲の咀嚼筋群も弛緩が有効に行われることが確認された。(3)Jー33から発生する音信号による自律神経系への影響は認められなかった。さらに(4)実験的ストレス負荷下では胸鎖乳突筋を除く筋群でBFTによる筋活動の抑制効果が認められたものの自律反応への顕著な影響は認められず、BFTは必ずしも筋活動と自律反応とを同時にコントロ-ルしないことが示唆された。 今後、これらの点を踏まえ顎機能異常者に対するバイオフィ-ドバック療法を確立させ、臨床応用する予定である。
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