研究概要 |
口腔扁平上皮癌における、癌遺伝子産物とEGFレセプタ-の発現を免疫染色により検討した。材料は10%ホルマリン固定、パラフィン包埋した生検材料を用いた。材料が多くとれた場合は、今後行うin situhybridization用に凍結包埋した。免疫染色はABC法(ベクタスティンABCキット)で、一次抗体は、抗mycマウスモノクロ-ナル抗体と抗EGFーRマウスモノクロ-ナル抗体(いずれもCRB社)を用いた。myc蛋白は扁平上皮癌症例の60%に発現し、核に陽性を示すものも数例認めたが、ほとんどが細胞質または核周囲に発現していた。EGFーRについては、扁平上皮癌症例の50%に発現しており、細胞膜に陽性を示すものもあったが、細胞質に陽性を示すものが多く、中には核周囲にみられるものもあった。EGFーR抗体については、ウエスタンブロットで反応性について検討が必要である。転移との関係では、myc蛋白で、転移陽性例の60%,陰性例の60%,EGFーRで転移陽性例の40%陰性例の53%で発現をみた。浸潤様式との関係では、myc蛋白で非浸潤型の63%,浸潤型の56%,EGFーRで非浸潤型の45%,浸潤型の67%に発現していたが、有意差はなくそれぞれ単独では腫瘍性質との関連性は低いと考えられた。今回、切片の十分にとれた症例を対象にしたため症例数が少なく、内訳に偏りがあったため、症例を追加して検討を行いたい。ras蛋白については市販の抗体について再検討を行っている。EGFーRはEGFとの関連性をみるためEGF染色の予備実験を行っている。またPCRによりras遺伝子の点突然変異の検索を行うため条件設定を行っている。現在口腔扁平上皮癌株2株が樹立されており、今年度購入した培養倒立顕微鏡(ニコンTMSー2A)を用いて、その性状の観察を行っている。
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