研究概要 |
口腔癌における細胞動態を,核DNAとRNA量の多重顕微蛍光測光および,AgーNORs,BrdUやPCNA(proliferating cell nuclear antigen)などの核内増殖関連因子の組織学的,免疫組織学的検索により解析し、その解析結果と臨床、病理的因子との多変量解析により,口腔癌悪性度の定量的指標を求めた。 1.口腔癌の細胞動態解析.核DNAとRNAの量的変化は口腔癌細胞の細胞動態を反映していた.放射線外照射,PEPやCDDPの治療課程での核DNAーRNAサイトグラムの変化と細胞像との関係では,効果の高いものでは,早期から高いDNA量とRNA量をもった細胞が増加し(G2M期ブロック),それとともに,変性細胞も増加した.逆に治療効果の低いものでは,核DNA量,RNA量ならびに細胞像とも変化が少なく,核DNAーRNAサイトグラムは治療効果,感受性の指標となることが確認された.また,核小体内AgーNORs数は細胞増殖活性と正の相関があり,その消失は細胞活性の消失ないし細胞死の課程と考えられた.PCNA標識細胞は概ね,BrdU標識細胞と一致し,S期細胞の検出に有用であることが確認された. 2.口腔癌周辺上皮の細胞動態,DMBAに誘発されたハムスタ-頬嚢の周辺には,さまざまな程度の上皮異形成や乳頭状の上皮増殖が認められ,核DNA量の分散、4C以上の細胞頻度は癌に類似した.臨床例の癌周辺異常上皮でも,核DNA量がaneuploidy patternを示したり,また核DNA量の分散,4C以上の細胞頻度が癌の最低値を越えるものが多くみられ,これら上皮は癌の母組織として悪性化の可能性が高いことが示された. 3.多変量解析の結果,リンパ節転移には原発巣の大きさ,部位,視診型,組織学的悪性度,核DNAーRNAサイトグラムパタ-ンが,放射線,化学療法効果には核DNA量,RNA量と増殖関連因子が寄与することが明らかにされた.
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