研究概要 |
この研究は学校歯科保健活動の効果を総合的、かつ客観的に評価し,その在り方を追求する事により今後の学校歯科保健活動の充実に資する事を目的としている.昨年度は,地域全体で歯科保健活動に取り組んできた小学校(以下A校という)と,春の定期検診だけを行ってきた小学校(以下B校という)の過去7年間の歯科検診結果と歯科保健活動の実態を調査し,二校間の差異の分析を行ったが本年度もその詳細について検討を行った.その結果,齲蝕罹患状態,口腔清掃度,歯肉炎の罹患状態のいずれにおいてもA校の方が良好な状態を示した. また,1986年度と同じアンケ-ト調査を実施し,自覚症状,歯科保健についての知識,歯科保健行動,一般保健行動などの経年変化をみたが,上述の口腔内状態の二校間における差異を裏づける行動変容が認められた. さらに,本年度,A校では定期健康診断の際に歯肉に炎症徴候の認められる者の検出を行い,学校における歯の清掃を学校関係者によって徹底して行った. その結果,学校での養護教諭,担任教諭らによる歯科保健指導,家庭での保護者の協力,そして学童本人の努力によって歯の不潔が改善されるとともに歯肉に炎症徴候のある者が約4分の1に減少する結果が得られた. 近年,歯周疾患の低年齢化が問題となっているが,この研究で得られた知見は学校歯科保健の中でとかく軽視されがちだった歯周疾患の保健指導および保健管理に有効な指針を与えるものであることが示唆された. 今後,さらに地域歯科保健活動の活発な地域と不活発な地域での差異を詳細に分析する予定である.
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