研究概要 |
今年度はまずフッ化物(NaF,APF,SnF_2)溶液処理による合成ハイドロキシアパタイト(HAp)の表面性状の変化がタンパク質の吸着現象にどのような影響を及ぼすかについてZeta電位的に解析した。その結果,NaFおよび0.01%FーAPF溶液でHApを処理してもゼ-タ電位に変化はなく,タンパク質の吸着被覆率および吸着自由エネルギ-もタンパク質の種類を問わず変化がないことがわかった。しかし,0.1%Fおよび0.9%FーAPFでHApを処理すると,負のZeta電位が小さくなり,それに伴ってタンパク質の吸着被覆率および吸着自由エネルギ-は低くなり,タンパク質の吸着を阻害していることがわかった。この傾向はとくに塩基性タンパク質であるプロタミンで顕着であった。一方,SnF_2溶液でHApを処理すると,負のゼ-タ電位は大きくなり,それに伴ってタンパク質の吸着被覆率は低タンパク質濃度から高くなり,吸着自由エネルギ-も大きくなった。すなわち,SnF_2溶液の処理によってタンパク質の吸着が促進されることが確認された。次に口腔内細菌の荷電特性を解明するため,1/30Mリン酸緩衝液中で5種類のStreptococciのゼ-タ電位を測定した。その結果,pH7.0の溶液中で菌種により,約1mVから約-25mVまでの幅広い値をとることがわかった。また溶液pHを変化させ,各細菌の等電点を求めたところ,S.mutans BHT<S.mutans K-1<S.cricetus HS-6<S.mutans OMZ175<S.sobrinus6715の順に高くなることがわかった。さらに培養時間や培地の種類などの培養条件が細菌のゼ-タ電位にどのような影響を及ぼすかについて検索したが顕著な差異ま認められなかった。 以上のことから,歯表面の荷電状態が獲得被膜の形成に何らかの影響を及ぼしていることが示唆された。また,生体コロイドとして,細菌のゼ-タ電位の測定が可能であることが確認された。
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