研究概要 |
日本人のフッ素の摂取量を知るための基礎データを得る目的で第三大臼歯エナメル質表層のフッ素含有量を調べ,同時に経年的な推移も調べた。 その目的で,(1)予め,フッ素の拡散分析法の改良を行う目的で,テフロン製の微量拡散装置を開発した。そして,拡散法とMcCannの報告した直接法とを比較検討した。その結果,エナメル質では良い一致が見られたが,デンティンでは微量拡散法の方が値が高い結果が示された。そこで,本実験では,エナメル質は直接法,デンティンは微量拡散法で以後の実験を行った。 (2)次に,被検試料とする歯牙の抜歯年齢,歯牙中の組織などを選定する目的で,歯牙のエナメル質,デンティンのフッ素量と年齢との関係を調べた。その結果,いずれも加齢に伴ってフッ素量が上昇する事が明らかになった。しかしエナメル質表面は摩耗のため,フッ素が増加しない事が明らかになった。指標物質としての歯牙を,抜歯時の年齢が20〜29才の範囲に限定して被検体とした。 (3)エナメル質表層1,2層のフッ素量を測定した。エナメル質表層の第1層は非常に変動が大きく詳細な検討が不可能であった.第2層は明かな経年的な変動が見られた.フッソ量は概して戦前が高く,第二次大戦中にやや上昇し,戦後は次第に減少する傾向が見られた.今後も減少するのか,横ばいに移行するのかは本実験の範囲では明かではなかった。今後,継続して調査する必要がある。
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