研究概要 |
モルモットのマクロファ-ジと多形核白血球には、IgG2抗体のみを結合するFcレセプタ-(FcR_2)と、IgG1とIgG2抗体の両方を結合するFcレセプタ-(FcR_<1,2>)が存在する。この2種類のFcRのうちの一方のみに抗原抗体結合物を反応させてそれぞれのFcRの機能を比較研究して、以下の事実を明らかにした。 1.多形核白血球では、 (1)FcR_2あるいはFcR_<1,2>を介する刺激では、ともに細胞内Ca^<2+>の動員が起こるが、ホスホリパ-ゼA_2の活性化に伴うアラキドン酸の遊離はFcR_2を介する刺激でのみ起こり、FcR_<1,2>を介する刺激では起こらない。 (2)FcR_<1,2>のアクチン重合反応を始動する作用はFcR_2に比較して著しく強い。 (3)FcR_<1,2>に連関する細胞内情報伝達系にはGTP結合蛋白が関与するが、FcR_2に連関する系には関与しない。 2.マクロファ-ジでは、 (1)多形核白血球の場合と同様に、アラキドン酸の遊離やNADPH oxidaseの活性化を始動する作用はFcR_2で強く、FcR_<1,2>で弱い。しかし、FcR_2の細胞内Ca^<2+>動員作用はFcR_<1,2>と異なり、著しく強い。 (2)多形核白血球の場合と同様に、GTP結合蛋白はFcR_<1,2>に連関する細胞内情報伝達系にのみ関与する。 (3)細胞内Ca^<2+>を除去してもFcR_2あるいはFcR_<1,2>を介する貪食作用はあまり影響を受けない。また、FcR_2を介するNADPH oxidaseの活性化も影響を受けないが、FcR_<1,2>を介する活性化は著しく低下する。 (4)両FcRを介する刺激によるアラキドン酸の遊離は細胞内Ca^<2+>の除去によって全く起こらなくなる。 (5)両FcRを介する刺激によってイノシト-ルリン脂質の代謝回転が始動されるがFcR_2の作用はFcR_<1,2>よりも強い。 以上の結果は多形核白血球やマクロファ-ジが抗原の性状に応じて2種類のFcRを使い分けて、最も効率良く抗原を排除する機能をもつという申請者の仮説を強く支持している。さらにFcR_2とFcR_<1,2>に連関した細胞内情報伝達機構の詳細を研究する予定である。
|