O_2産生にはたらくNADPHオキシダ-ゼは通常は不活性状態にあり、刺激により活性化されるわけであるが、この活性化はフラビン蛋白、シトクロムb等の細胞膜蛋白と、細胞質から移行してきた細胞質因子とが会合して複合体を形成することによると考えることもできる。そこでO_2産生刺激後白血球を蛋白を失活変性させない程度の低濃度のグルタルアルデヒドで処理したところ、本来不安定なNADPHオキシダ-ゼ活性が著明に安定化された。逆に先にグルタルアルデヒド処理を行うと、刺激してもO_2産生は引き起こされなかった。グルタルアルデヒドは蛋白架橋作用を有するものであるから、前の場合では形成された活性複合体が構成蛋白間の架橋により安定化され、後の場合では別種蛋白間で架橋が出来てしまって活性複合体形成に至らないと考えられる。PKC activator処理の際単独ではO_2産生に至らず、他刺激との組み合わせを要することは既に述べたが、我々は、白血球を予め低張処理する(培地中のNaCl等の濃度を下げる)と、PKC activatorのみならずアラキドン酸やSDSによるO_2産生が著しく増大することを見出した。これらの結果は、上述の活性NADPHオキシダ-ゼ複合体形成がO_2産生の主反応であるとしても、前もって細胞膜変化が必要条件として作動していることを示している。この前提段階構成反応はprimingとも呼ばれる。細胞細格の一部が細胞膜と会合して膜機能を支えていることはよく知られているが、ミクロフィラメントを脱重合させるcytochalasin等による処理はO_2産生に対して低張処理と似た効果を示した。一方、我々は蛍光色素を用いて膜電位変化を測定し、priming状態に刺激が加わってO_2産生されるに至る条件下では細胞膜において脱分極的変化が進行することを認めた。これらの結果は、primingと膜の分極状態との関連を示すように思われる。
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